それなのに、この本はいとも簡単にやってのけます。
「『活きのいい刺身』はうまそうなのに『死んだばかりの魚』と言い換えると、人は食欲が失せるばかりか、魚がかわいそうになったり、なんとなく不衛生な感じがしたりする」「『肉汁あふれるハンバーグ』はおいしそうなのに、『ハンバーグからあふれ出たリンパ液』というと食べたくなくなる」それは、「刺身」そのもの「肉汁」そのものを食べているのではなく、「刺身」という言葉を食べている、『肉汁』そのものをうまいと思っているのではなく『肉汁』という『言葉』を聞いてうまいと感じているということなのです。(第一章 言葉ってナニ?)
言葉の意図が伝わらないとはどういうことか、言葉で見える世界が変わるとはどういうことか、話はどんどんと広がっていき、意図を伝える、心を伝えるすばらしさと必要性を、金田一先生の過ごした苦悩多き青春とからめて教えてくれます。気取らず、悩み深い子どもたちに寄り添うような、好奇心の刺激の仕方は、曲がりなりにも教える立場の私にも勉強になります。また、具体的なことばの練習法も載っていますよ。
言葉は思考・自分というものの内面のすべてです。磨けばさらに磨かれるし、深めればいくらでも深まる、それは見える世界を変えて、自分の人生の質も変えてくれるものです。
「国語苦手だ!」「物語で気持ちを読み取るって、なんのためだよぉ! 無理だよ!」なんて言っているあなた、集中して読めば2〜3時間もかけずに読めてしまいますから、手に取ってみて下さい。人生を変えるかもしれません。
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